動物農場

ジョージ・オーウェル原作の「動物農場」、アニメーションが存在することを知り、さっそく観てみました(というかレンタル屋でたまたま発見した)

動物農場」は、ロシア革命とその後起こった内ゲバを、動物たちの物語に置き換え描いた寓話的物語。一見子供向けかと思われますが(?)その実全編アイロニーあふれた物語で「はは。イギリスぽいな」と思うこと必至。とくにトンチの効いたラストは秀逸でございます。

で、アニメ版はどうだったかというと---これがなかなか面白い。

なんといったらいいんでしょうか、あらゆる要素が原作と較べて「はっきりとした味付け」になっております。味のコントラストがはっきりしてるといいましょうか。

トロツキーをモデルにしたと思しきブタ「スノーボール」のアジテーション&的確な指導力のかっこよさたるや。かたや、スターリンをモデルにしたと思しきブタ「ナポレオン」の下衆っぷり。チキンかつ小ずるいナポレオンの行動にはガチでムカつきます。原作の5割増しでムカつきます。殺意が沸きます。「このブタ野郎!」と心の底から罵りたくなります。あとはアレね、労働者の鑑たるキャラ「馬のボクサー」のキャラ立ちっぷりがなんとも素晴らしいですね。彼の労働に対する真摯な姿勢には思わず涙を流すほど。

と、味付けを濃くしてる部分ばっか挙げましたが、実はそうではなく、アニメということで「より子供向け」を意識してのことでしょうか、「ヤダ味」の部分はバッサリ削除されてたりします。それはどんな部分かっていうと「デマゴギーに簡単に翻弄される愚民描写」。これは全面削除されております。うーむ。この辺は原作でも味わい深いところだったのですが…まあ致し方なしか。
というのは、この改変はラストの改変に関連してるからなのです。そう、アニメ版の「動物農場」のラストは原作と大幅な変更がなされているのですねー。しかし、この改変されたラストが結構燃えるんですよね!!

『冒頭で「秀逸」と述べたラストと違うのにイイの?』とおっしゃる方もいらっしゃいましょう。

うん。それは別にいいんです。
「史実」の面白さと「夢」「希望」の面白さの違いですから。それぞれ別の面白さなんで全然OKなんです。

というわけで、知性を獲得し世界が輝きを見せる様子や、地道な労働の美しさ、それに対して、自己の利益しか求めない為政者が行う詐欺行為の醜さを、的確、かつポップに描いてある素晴らしいアニメですので、是非、現代日本に住まう老若男女の皆さまに観て頂きたいですね。

というのは---

こういう感覚って今の日本人に著しく欠けてんじゃね?と思うからです。
たとえば「動物農場」や「1984」で描かれる権力者による歴史改竄や捏造って、全然フィクションの話じゃなくなってるもんね。現実に起こってるんだもん。でも搾取される側である我々は意外とその事実に気付いてなかったりするわけで、なんというか、まず「歴史は繰り返している」という事実を歴史から学ばないといけないよねー。


【採点】
提供であるジブリのボス・宮崎駿のガチ度400点
曰く「セレブって豚のことでしょ。今、豚は太っていないんだよね。ジムなんかにせっせと通ってスマートだったりするから」