THIS IS ENGLAND

1983年、サッチャー政権下のイギリス、お父さんをフォークランド紛争で亡くした主人公のショーン君(12才)は、ひょんなことからスキニッズの連中と仲良くなり---

この映画、実は今回実際に観てみるまでコメディだと思ってたんだよ。だってさ【12才の少年がベンシャーマンのシャツとサスペンダー装着ししてナショナルフロントの集会に参加する】んだよ。【小学生が鳥肌実の格好して右翼の集会に参加する】ようなもんだよ。ギャグとしか思えないじゃん!

でも全然そうじゃなかったんだよね。

ショーン君がそこに至るまでのプロセスって、誰にでも起こり得ることなんだよね。発端はよくある「ユースカルチャーとの出会い」。それまで弱っちかった自分がイカしたファッション身にまとって特定のトライブに所属し世界と対峙する。フツーですよね、フツー。でも彼が出会ったトライブが「そういう」トライブだったからズルズルーッといっちゃったわけですね。

でもさ、特定の集団は「神の国」かっていうと勿論そんなこた無い。弱っちい人間が作り上げた集団である以上「色々ある」のは世の常。
超ヒップだと思ってたヤツが実はヘビみたいな単なるファッション野郎だとわかったり、ハーコーだと思ってたヤツが、実は童貞マインド全開のアタマも精神も弱っちい可哀相なヤツだとわかったり。
まあまああるじゃん、そういうの。でも、その描き方が超イイんだよ。一から十まで全ー部説明するようなヤボなことしてないの。彼らの取る「行動」で説明してんの。だからさ、例えば「不幸」であることに対してベトベトしたセンチメンタリズムが纏わり付いてないの。なんかさ、素材の持ってるヤなカンジがダイレクトに届いてくる。オシャレ。

で、キモはさ【12才の少年】が、そういう「現実」をまざまざ見せ付けられるっていうところ。
12才だよ、12才。痛いんだよ、これが。超痛くてイイ。
例えばさ、これが「狂い咲きサンダーロード」なら、一応成人としての「武力」があるからコブシを振り上げることが出来るわけじゃん。でもさ「THIS IS ENGLAND」の主人公は12才なんだよね。だから圧倒的に「力」を持ってないんだよ。これは痛いよね。

無力なコドモの憤りってさ、切ないよ…!

いやおうなく「ヒップだったと思ってた兄ちゃん達も結局は世界の一部だった」っていうのを見せつけられるショーン君。こういうのがホントの「負け犬」映画だと思うよ。ホントどうしようもない。みんなモヤモヤしてんの。みんな個人では抗いきれないモンに翻弄されてんだ。

                                                                                  • -

役者陣、皆さんイイ顔してるし(イギリスの映画ってリアリティ出すために所謂美男美女はあんま起用しないんでしょ)風景も超イイんでマヂおすすめ。具体的に良かったとこあげとくと、「イヤな先輩が登場したときの不穏な空気感の演出」とか、「お母さんと靴買いに行ったら、店のババアがマーチンのニセモンをお母さんたぶらかせて売り付けようとする」のとか最高でした。

【採点】
ジャケ0点!!
「さら青」とか「トレスポ」調すぎる!!
そういうのじゃ無えだろ!!
(本編はオレクラシックに認定)