エクスペンダブルズ

「長淵さん!映画のタイアップ曲取れましたよ!」

某月某日、マネージャーから一本の電話。

「はあ?なんの映画?スタローン?あの筋肉バカまだ映画やってんの?」


あの新入り、朝早くからつまんねえ電話かけてきやがって。しょーもねえ仕事はいらねんだよ。万人に聞かせる曲なんてクソだ。求めても無いヤツらに一生懸命声届けようとしたってムダなんだよ。確かに一時はなびくかもしんねえよ。だがな、あいつら飽きたらすぐポイだ。新入りはその辺全然わかってねえわ。俺は俺のファンだけに曲を書いてればイイ。それで満足だ。しかし、小銭稼ぐのはやぶさかじゃねえ。適当に口当たりのイイバラードとか書いときゃイイだろ。阿呆が。

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「あんた、今、スタローンの映画の曲書いてんだって?」

「はあ?誰から聞いたんだよ?新入りが言ったのか?クソが」

普段、オレの仕事に口出しなんぞしねえ悦子が突然切り出してきた。

「お前、3Dテレビ欲しいつってたろ。アレ買うためだよ。クソみたいな映画でも小銭稼ぎにはなんだろ」


黙り込む悦子。重苦しい空気がリビングに充満していく。
なんだよ。何が気にくわねえんだよ。3Dテレビ欲しいつってのはお前だろうがよ。
理由が全然わかんねえ。お互い無言のまま、ただ時間だけが過ぎてゆく。
しばらくすると、意を決したかのように悦子が口を開いた。


「…クソってなによ、クソって。あんた観たの?エクスペンダブルス」
「ああん?なんだそれ?映画の題名か?英語はよくわかんねえな」

「クローズ・ユア・アイズの1億倍良いタイトルよ。あんたホント何もわかってないわね」
「ああん?なんだとこのアマ!!!」

「あんたはホントに何もわかってない。今回のタイアップ、どういう経緯で流れてきたと思ってんの。そもそもこの映画、わたしに出演のオファーがあったのよ」
「な…なん…だと…?」
「スタローン本人からよ。直電よ。」
「な…な…なん…だと?」


「エクスペンダブルス、つまり、消耗品のこと。そのタイトルの下、かつての筋肉俳優達が一同の介してアクション映画を撮るの。それだけでいかなる映画か推して知るべしでしょ。その中に、紅一点、わたしの名前が挙がったわけよ。」
「き、筋…肉野郎ばかりだと…味気ないからか…」
「たまには頭が回るようね。おそらくそういうこと。わたしがまだバリバリ動けるという情報を仕入れたんでしょうね。でも断った。家族のために。」
「………」
「その代わりといっちゃあなんなんだけど、あんたのことをスタローンに話したの。ぬるま湯に浸かった生活してるあんたのことをね。スタローンはしばらく黙りこんでたわ。でも最後には『ハハハ。OK。エッチャンノ旦那ヲ戦場ニ引キズリダシテヤルヨ!!』と言ってくれたわ…」
「………」
「昔のあんたはもっとヒリヒリしてた。だけど今のあんたはただの内弁慶のコドモと一緒よ。筋肉の鎧をまとってても心は因幡の白兎級のやわ肌よ。というか、あなたにとっての筋肉はなんなの!!あなたにとっての筋肉は…歌じゃないの…!!!!!」


ありがとう悦子。
時間無かったから、ロック調のトラックのわりに、いつもの如くフォーク調のメロディになっちゃったけど、心をこめて歌います。
絆−KIZUNA−。

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ってなげーよ。

以下内容シャットアウトしときたい方は読まないでネ

といいつつ、本編のお話はパンフレットのJ&増子さん対談がおおむね語っちゃってるのでほぼ割愛します(ちなみにミッキー・ロークの独白シーン、途中一瞬寝てしまったのかとおもったけどそうじゃないことが判明して安心した)。
メモばかしに書いとくと---


ジェット・リーの身長さんざんいじってるけど、スタローン、あんたとそんなにかわんねーだろ!!
ジェイソン・ステイサムのアタマに刺青入れてやろうぜ!絶対クールだぜ!
ティーブ・オースティンおかかえの美容師の面みせろや!


などなど自虐的な台詞回しが多くて笑えますね。


あとは、スタローンの猛烈なダッシュが萌えました。んでそっから死の飛行!!!すげー!!人がゴミのようだ!!!
ラストの、爆弾ブン投げて弾丸でもうひと押しとか、やり過ぎなところが面白かったです。


あえて苦言を呈するなら、クートゥアは胴タックルより足タックルのほうが見栄え良かったんじゃないかな(非常にどうでもいい話)