ハロルドとモード

〈若くして人生に絶望しまくりのハロルド君〉
〈趣味は自殺ごっこと赤の他人のお葬式に出席すること〉
〈そんな彼が齢79才のモードおばあさんと出会い心に変化が---〉
〈というわけで前代未聞のボーイ・ミーツ・グランマ映画!

                                                                                            • -


いやーこれは想像以上に良い映画でした。


この度、ロバート・アルトマン監督作「バード☆シット」と2本連続で観たんですけど、並べて見比べてみると、オープニングタイトルが出るまでの数秒の段階で「体裁の良さ」の違いが浮き彫りに。


「ハロルド〜」は、しょっぱないきなしハロルド君が首吊り自殺するシーンから始まるんですけど、編集と音楽のシンクロ具合が絶妙で超グルーヴィー。


くるよ〜…
くるよ〜〜…
くるよ〜〜〜…
はい!吊ったー!!ドーン!!!


ってカンジでテンションあがりまくり。その後も終始凝った絵作り貫いててとってもエクセレント(ってアルトマンをディスしてるじゃなくってあくまで体裁の良さ、整い具合の差異であって、いや、だからディスじゃなくって、アルトマンのトチ狂った編集はそれはそれで超面白いわけですのであしからず)。


いやまあホント良く出来ててさ、序盤は執拗にシンメトリックな画面を多用してて、いやがおうでも「生と死」「若きと老い」「光と影」「男と女」といった二律背反する事象を想起せざるを得ない。で、その価値観が世間一般でいうソレとずれてって混濁し---っていうか、ようは、ハロルド君、いっつも生気のない土色の顔面してて、マヂ自分の人生に興味なさげで、全ては燥気味のお母ちゃんの言いなりで、ってカンジで若いクセして徹底した死に体っぷりなわけ。対して79才のモードはっつうと、神父の車盗んで爆走しまくるわ、ヌードモデルやるわ、「ダンスは地球の鼓動」なんてぬかすわ、女学生から和装まで幅広いコスプレみせるわで、見事なまでに無軌道なヤングっぷりをみせてるという(あ。全然関係ないんだけど、観賞中、生と死が混濁してくという意味で「バニシングポイント」が頭よぎったんだけど、撮影監督が同じなのね。面白いね)


でも、それがです、ハロルドとモードがデートするようになってからはシンメトリックな画面は減って、なんつーか、自然の美しさ、人間の作り出した景色の美しさ、つまりは世界の美しさの片隅で寄り添う二人が強調されてくんだよね。うん、ステキね。面白いね。よく出来てるね。

                                                                                            • -


んで、ラストシーン。
これがまた良くってさ、モードから、本当の死-さえも-学び、上っ面の「ごっこ」としての死を捨てる---って出来過ぎてるぐらい良く出来てる。

つかさ、全然知らなかったんだけど「さらば青春の光」って「ハロルド〜」からもろ頂いちゃってるんですね。完全に一緒でビビった。ただし、ラストシーンの後、主人公が歩む道は大きく違うカンジがするよね。これまた大変興味深い。

つまりさ、「さら青」の主人公はバイクを崖からおっ捨ててユースカルチャーと訣別、世の中はどうにもならんことばっかで、でも、でも、でもやるんだよ…ってカンジで「大人=社会の一部」になるわけだけど、ハロルド君の場合---


お家がケタハズレの財力持ってるから、なんだかんだ言ってその後相当イイ生活送ってそうなんだよね。


実は、その「なんだかんだゆうてもリア充感」は不満の残るとこではあるんです、非リアからすりゃあね。ちょっと腑に落ちない。けどさ---


それこそカウンターカルチャーの真実の姿なんだよね。
つまりヤッピーになったヒッピー!!!!的な。


というわけで、ニューシネマの特徴である敗北主義を貫きつつ、その化けの皮をはぎ真の姿を見せつけるという意味で「ハロルドとモード」こそカウンターカルチャーの象徴的映画なんじゃないかと思えてきた。ちゃんと(?)軍人バカにしてるしね!