GSワンダーランド

〈1969年の日本!〉
〈空前のGSブーム!〉
〈聖地「日劇」に出演することを夢見た青年3人が電光石火のデビューを果たす!〉
〈と思ったらレコード会社から「3ピースのバンドなんてないよ」って言われ!〉
〈急遽、家出少女の栗山千明をねじこんで新バンドでっちあげる!〉


これは…予想以上の快作でした!!!

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監督の本田隆一さんは昭和49生。同年代。だからこそわかる、わかる、わかる、わかるよ!彼は間違いなく15年程前、ヤングの間で一大ブームとなった60sリバイバルシーン出身者だ!!
だってさ、こういうのって半チクな方が手掛けると絶対「なんちゃって感」出るんだもん。でも全然そんなことないのね。お洋服とかお部屋の調度品とか美術関係全部、地に足ついたオシャレっぷりなのね。ライブシーンに使われるハコだって、神戸の伝説のクラブ「月世界」使ってるしさ、アレだよ、監督さん大阪の大学出身だからさ、若い頃街を徘徊して「ヒップだなー」と思ったとこ使ってるんだよ!(と思う)


そんな監督さんですから音楽も抜かりないわけ。劇中曲手がけてんのが、(これまた)伝説のネオGSバンド、ザ・ファントムギフトのサリー久保田さんだぜ!そんなもんカッコいいに決まってるわ!さらに主人公たちのバンドの曲つくってるの作詞:橋本淳・作曲:筒美京平って!!!!おいおい全曲7インチ切ってくれよ!


と、まあそんなカンジで「この人絶対仲間だよ」というバイブスをビンビン発してくれてる次第でして、その時点で、個人的には相当満足するもんあったんですけど---全然甘かった。


ストーリーも素晴らしかったんですよ、これが!!

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どのようなストーリーか端的にいいますと「ユースカルチャーの光と影」モノ。ようは日本版「さらば青春の光」を目指したに違いないわけです。あの時代、60sシーンに居た人間でモッズの影響受けてないヤツなんていなかったろうからね!!!


つか、今作においては「さら青」の持ってた、少年が大人の階段を登る切なさに加え、シーンそのものの徒花っぷりも描いてるからなかなかのモンです。


レコード会社、所属事務所、各メンバーの思惑が絡み合いながら、主人公達のバンドは69年という狂騒の時代を駆け抜けていく。そして年が変わって1970年。たった1年で時代の空気は激変する。そこで主人公たちは---っていう展開は、もうね---

泣くよね。

そういっちゃうとさ、なんか「当時は良かったなー」みたいな懐古主義的に捉えられるかもしんないけど、そうじゃなくってさ、「時代は変わる」「永遠に続くもんなんて無い」ことが浮き彫りになるのがイイんだよな。でもさ、でもさ、それでもやっぱ音楽が「時代を越える」瞬間を見せてくれるのがタマランわけですわな。


とにかくさ、クラブで朝まで遊んでさ、明け方の静かな街を歩く時ってなんか切ないじゃん。でも、祭りの楽しさって、その終わった後の切なさ込みでイイんじゃん。なんかさ、そういう光と影を踏まえてオトナになるのって---


好きなんだな。


(実は、69年から70年に時代が転換したときのコントラストの描き方がちょっと軽いのは大変惜しく思いました。高岡蒼甫←最高)率いるライバルバンドや、グルーピーマナカナ←最高)をもうちょい上手く使えばさ、「時代が変わってしまった感」がもっとクッキリ出て、より切なくて良かったと思うんだなあ)

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ちなみにです、上述しましたが「GSワンダーランド」に出てる人たちは、皆ファッションキメキメで超オシャレ。なんせ、オシャレするのは自分がどこに所属してるか明確にするためだもんね。そうやって「俺達は異物だ」っていうアッピールをする。異物で在ることをアイデンティティのよりどころにしている。そんなモン、ユースカルチャーにおいては当たり前のことですわな。やりたい音楽やファッションが明確にあってさ、めっちゃ練習したり、そんなかで人とは違うスタイル見つけようとして試行錯誤する。でもさ、それでもどうしようもないカベにブチ当たる。個人の意思ではどうにもならん壁にブチあたる。絶対敵わない社会と対峙する。

唐突ですが「サイタマノラッパー」に全然ノレなかったのはその辺の視点の無さなんだな。

ニートでさ、トラックも作れなくってさ、あげく自分の言葉持ってないヤツが右往左往しようが「そんなモンしったこっちゃ無えよ!」ってなるわけ。つかさ、お召しになってるお洋服も別にそのへんのフツーの兄ちゃんじゃん。なんかさ、超ーーー雰囲気だけのB-BOYじゃん。それってさ、カッコイイの??マジなにがやりたいの?? だから、そういう方が紆余曲折を経て「自分の言葉でラップしました!やりました!感動でごさい!」って言われてもさ、

「ハア??」

ってなっちゃうんですよね。
あのさ…皆、そっから先の苦労してんですけど…って。

でもでも、例えば、主人公のニート君がさ、テツ&トモ調のオシャレとは別ベクトルのジャージのスタイルだったり、歯が全部金歯だったりしたら同じシナリオでも全然許せたかもって思えた。ようは異物感の有無。イリエ監督さんよ、貴方、パンタロン履いてるとこを、同級生の暴走族、それも湘爆の桜井みたいなマスクつけた化石みたいな暴走族にみられて「自分どんな格好してんねんw今時パンタロン履いてるヤツなんかおらんでww」って言われたことないだろ。地元の商工会議所みたいなとこでラップを披露?あのさ、戦場はそういう特殊な状況下にだけ存在するんじゃないんだよ。日常がすべて戦場なんだよ。地方でユースカルチャー信奉するってそういうことなんじゃないのか。突然狙撃される覚悟を持ってキテレツな格好してんだよ。政治的な表明だよ。ホントファッションって大事なんだよ。うん、大事にしてください。

ユースカルチャーっていうのは狂人たちの一夜限りの祭りなんだよ。マジョリティに成りきれないはみ出し者の集いなんだよ。もちろん「GSワンダーランド」もそうだよ。「光る風」のOPの祭りシーンみたいなもんなんだよ。じつは何が起こってるかわかってるまぼろしの市街戦」のキチガイたちみたいなもんなんだよ。
終わることを知ってても、でも踊り続けなければならない祭りなんだよ!!
そして、も一度いうけど皆その地点でもがいてるんだよ!!!

(なんて「サイタマ〜」に関してはアレなんです、この映画を取り巻く雰囲気に対してなんともいえんヤダ味を感じてる部分が一番大きいんですけどね。なんかさ、なんかそういうことだよ)

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と、話がそれましたが、「GSワンダーランド」、全編にわたって丁寧に作られてまして、なんせエンドクレジットまで素晴らしいし(日本におけるレイドバックを見事に描いていると思う)、役者陣もマジ豪華だし(レコード会社の社員が岸辺一徳大杉漣杉本哲太なんだよ!豪華すぎるよ!)、なにより水嶋ヒロがイイですし(真面目で堅物なカンジが笑えるキャラってメチャハマってると思う。次回出演作に期待したいね!)是非、「サイタマノラッパー」が好きな人にみてもらいたいですね!!(←…