エンジェル ウォーズ (サッカー パンチ)

はじめはプププと笑いながらみてたよ。
特に、いっちゃんはじめにベイビードールちゃんが踊り出すとことか最高すぎ。オーディエンスが「ワーーオ…」ってなってさ。アホかっつうの。それ以降もベイビードールちゃんが肩をユラユラ〜ってするたびにプププ。しみじみ『これ、カウチでハッパとともに観たら最高なんだろなー(※イメージですよ)』と思ってしまいました。


なんてカンジで観てたんだけど---


ラストが素晴らしすぎるだろ、これ!!!!!!

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以下もりっとネタバレ注意













この映画最強のツイスト、それは「誰がこの物語の主人公なのか?」っていうこと。


つまり、この物語の主役はベイビードールちゃんじゃなくって---


スイートピーっていうオチなわけじゃん!!


今から大事なこと言いますよー。一見似てるけど重大な違いを言いますよー。
この物語は「主人公であるベイビードールが犠牲になり、最終的にスイートピーがサバイブする話」じゃなくって「主人公であるスイートピーがなんやらかやら様々な困難を潜り抜けてサバイブする話」なんですよ。「主人公の利他的な行動によって、サブキャラが生き残る話」じゃなくって「主人公がサブキャラの利他的な行動によって生き残る話」なのです。で、それをベイビードールちゃん視点で描いてるんですよ。だから、精神病院から脱出する最後のカギは「ワタシであるベイビードール」じゃないんですよ。「今まで喧嘩もしたけど最終的には心通じ合ったベイビードール」なんですよ。
キチガイ病院にブチ込まれたけど、「やっぱこんなとこヤダヤダ」と、絶妙にブスかわいいエンジェルちゃん達がダンス妄想脱出大作戦を試みようとするわけですが、その、実際のところよくわかんねえダンス妄想脱出大作戦の中で、ナゾの賢者が登場して彼女らを助けるわけじゃないですか。でよ、謎の賢者に唯一出会うエンジェルは誰ですか?そう、ようは「エンジェルウォーズ」って、賢者の存在を唯一知ってる人物が紡いでいる物語---そういうことなんですよ。そうかそうか、だから、スイートピーは、初登場時「縮尺狂ってんじゃねえの!!?」って思うぐらい巨大に映ってたのか。だから、ベイビードールちゃんはちょいちょいギャル曽根に見えたのか。納得納得、腑に落ちた(違う)。

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もう少し詳しく書きましょうか。
「エンジェルウォーズ」における階層の話を書きましょうか。


「エンジェルウォーズ」って、まず一番下に【ぶっちゃけ冗長なCGバトルの階層】があるのは解りますよね。で、その上に【娼館の階層】がある。その上は、そう、【ベイビードールにとっての現実の階層】ですね。そこまではキッチリ(?)描いてるからよくわかります。でさ、実はその上が在るんですよね。それは何かっていうと【ベイビードールが端役として登場する、スイートピーにとっての現実の階層】が在るわけです。それこそが、映画「エンジェルウォーズ」における、最上階の「現実世界」なわけです。


えとね、一番最後にベイビードールちゃんのモノローグがあるじゃないですか。

「誰が私を躍らせたの?」って。

「誰が私を躍らせたの?」つまり「誰がベイビードールを躍らせたの?」

「誰が魂の無いはずの人形を躍らせたの?」


ベイビードールとは---「本当のエンジェルウォーズ」=「スイートピーが主役として存在するエンジェルウォーズ」においては−極論をいえば−「書き割り」的な存在なのです。そこに主観は無い(主観はスイートピーにあるので当然の話なのですが)。アナタにとって他者とは、アナタに主観がある以上、アナタがその対象の主観を感じることは出来ない、永遠の他者なのです。「エンジェルウォーズ」は、そういった本来はあり得ない「他者が物語ること」を描いています。そう、ベイビードールちゃんという、本当は魂の宿っていない囚われの抜け殻に物語らせているのです。って、もしくは、スイートピーイマジナリーフレンドに語らせた物語といえるかも---なんですけどね。まま、どっちにしてもとってもキモチ悪い構造には間違いない!

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というわけで。
CGバトルが冗長なのは仕方ないのです。一見ド派手にみえて全く抑揚がないのは仕方ないのです。だって、あのバトルは、本当は魂が無い存在であるベイビードールが生み出した世界なのですから、ペラくて当然なのです。そう、今作の冗長さとは、「ディスコ探偵水曜日」において延々延々と続く謎解きや、「メイスン&ディクスン」における断片的な旅の記録同様、物語の結末にとって必然的な冗長さなのです!!


いや、ほんとにさ、「エンジェルウォーズ」の最後のツイストは、かようにおもいっきり詭弁を弄して援護射撃したくなるぐらい素晴らしい!!と思ったわけですよ。マジでマジで。

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ま、とにかくよ、これって「インセプション」のアホの監督がやろうとして出来ていなかったことですよね。というか、「インセプション」の監督のアイツ、雰囲気でそういうの描こうとしてたけど、実はアホだから、全然本質突いてなくって、正直な話、アホのくせに賢ぶってる姿勢に対して、反芻すれば反芻するほど、其の度に反吐が出そうになったわけだけど、いやー、まさかねー、全然アホだと思ってたザック・スナイダーにヤラれるとは思わなんだですねー。って「インセプション」の人にも、ザックくんにも失礼ですね、ごめんなさいね。


「貴方はこの物語の主人公ではなく、誰かの物語の端役の一人にすぎない−まま重要な位置を占めているけど−」


というわけで「インセプション」の4700テラ倍、実存を揺さぶる傑作。



え??ええ??「そんなモンお前の妄想だろ!」って??違うよ!そんなわけないよ!これはザック・スナイダーが直接オレに教えてくれんだよ!!いつ??いつだって??そんなもんな……いっつもだよ!!ザックが電波で教えてくれんだよ!!オレの脳みそに直接電波送って教えてくれたんだよ!!はあ??オレはいつでも正気だ!!オレはオレだ!!オレはオレ以外の何物であろうはず無えだろ!!キチガイと一緒にすんな!!オレは断固キチガイじゃない!!