ブラック・スワン

〈毎度のことですが観てから読むこと推奨〉






ブラック・スワン」を見終わっての感想は大まかにいうと以下の2点。




「バレエって面白いな」ということと---



「オナニーって大事だな」ということでした。


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個人的には、同監督作品「レスラー」との類似性は全く感じなくって、後ほどそのようなご意見を目にして「あ。なるほど!」と思ったぐらい、カンペキ別方向に集中しちゃってました。あとさ、「パーフェクトブルー」っぽさも全然で、というか「パーフェクトブルー」的なモノを求めて観ると結構ガッカリするんじゃないかなあと思ったり。じゃあ何に似てるかっていうと---それは後ほど。

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まず、何故「レスラー」を感じなかったかというと、それはもう確実に、オナニーに引っ張られたからです。というわけで以下例えて物語ってみます。

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エロ同人サークルに所属してるニナさん(ペンネーム)は、今度ビッグサイトで開催される巨大コミケにて、サークルの代表として自身のエロマンガを出品することになりました。なんたる光栄。最高の気分。ちなみにニナさんは知っています。サークルの人達が、陰で自分のことを「不感症野郎」とか「ヒステリック処女」といった言葉で罵倒していることを。
ええ。自分でも解ってるの。ワタシは確かにコミュニケーション取るのヘタだしヒステリックなとこもある。でもその分超頑張ってる。サークル内でつるんでチャメチャメやってる見るからにキモヲタのヤツらの百倍頑張ってる。だからワタシ負けない。絶対ステキなエロマンガ書いてみせる!
そんなこんなで、ニナさん、一人でシコシコとスクリーントーンを削る日々だったわけですが、ある日突然、サークルの先輩男子からこんなこと言われます。


「ニナ君……キミ、実はセックスしたことないんじゃないの?キミのエロマンガ、とってもキレーなんだけどいまいち勃起しないんだよね……」と---


ショック!!
ニナちゃん大ショック!!


ひそかに恋い焦がれてた先輩にそんなこと言われるなんて……
つか勃起って……!!


「あ、あとさ、これは別に他意は無いんだけど、女性ってオナニーするの?グヘヘ。ん?イヤイヤ全然全然!そういうのじゃないんだよ!ホントぜーんぜん意味は無いんだよ!たださ、今月のPOPEYEに『女性の8割はオナニーしてる』って書いてたんだよ!それが気になっただけなんだよ!」


せ、先輩、一体なんなの……突然オナニーだなんて!キモすぎる!でも……皆オナニーしてるのか……じゃあワタシもしてみようかな……どうせなら思い切ってお酒も飲んじゃおうかな……ハアハア……な、なにコレ……ハアハア……ちょ、ちょっとなんなのコレ……超オオオオオオオーーーー筆が進むんですけどおおおおおお!!!!!(←勿論ダブルミーニングです)


というわけで。オナニーすることで何かがふっ切れたニナさん、鬼の形相で作品書き上げるんですけど、出来上がった作品はなんと!ふくしま政美級の肉弾漫画だったのです!!

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これさ、私の読み解きが悪いんじゃなくって、ダーレン・アロノフスキーがそういう風に構成してるんだから仕方ないのです(キッパリ)。マヂでさ、この映画を3部構成にわけると、転換部に導入されてるのはオナニーシーンなんだもん。
正直、一発目のオナニーには仰天しました。「−時間配分的に転調である−このタイミングで『オナニーするんだけどイケない、どころかお母さんが居て焦る(←ここの描写は世の男性にとっては堪らない恐怖描写ですね)』っていうシークエンスが入るということは……第2パートの終わりは『オナニーしてイク』しか無いじゃないか……マヂか……ダーレン・アロノフスキーナタリー・ポートマン、お前らやれんのか!?」と。そしたらさ、いやーまさかの予想通りでしたね。

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というわけで、「ブラックスワン」、個人的には「でもやるんだよ」イズムより、抑圧とそこからの解放、そして、その結果がいびつに花開く面白さを感じ取った次第でした。


で。冒頭の話ですよ。この映画は「パーフェクトブルー」に似てるんじゃなくって、−これは変テコな話なんですけど−まさに「バレエ」そのものを描いているんじゃないでしょうか。映画的表現でバレエを表現する(これが滅法面白かった)のと同時に、バレエが持ってる「いびつさの果ての美」を描いているというか。私、一時期、NHKの「スーパーバレエレッスン」にはまってずっと観てたんだけど、そん時に感じたんだよな。バレエの所作って一個一個局地的にみるとスゲー奇妙じゃないですか。足首をグリンッって曲げたり、超つま先立ちで回転したり。でもさ、俯瞰して全体像みるとさ、「やっぱこれしか無いわ…!」っていう完成された美が立ち上がってくるんだよね。「ブラック・スワン」自体がそんな構造だよなーなんて。実際、ニナのお話は「白鳥の湖」とシンクロしていきますし、今作は「心理サスペンス云々」として観ると同時に「バレエとはなにか」っていうのを想像して観たら立体的に楽しめるんじゃないかなあなんて思ったりしました。

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というわけで最後にもう一度主張しておこ。「ブラック・スワン」は女性のオナニー礼賛映画の傑作であると。そして、そんな映画の公開日をレディースデイにブチかましてきた配給会社!GJとしかいいようが無いよ!帰りし、女性客の皆さまがどこかニヤニヤしてたような気がして堪らなかったぜ!本当に有難う!(←ボクの中のオディールが書かせた文章であって、ボクはそんなこと微塵も思ってませんのであしからず。またこんなシメ)