ブラッド・バード監督によるミッション:インポッシブル―「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」―

ワタクシの中でトム・クルーズさん愛が急上昇したのは「ナイト&デイ」以降だったりします。どんだけ最近やねんという話ですが、まあとにかく「ナイト&デイ」が鮮烈すぎたのです。「マグノリア」や「宇宙戦争」あたりで、ミドリとアカの間をユラユラ揺れ動いてたゲージが「ナイト&デイ」を観たあと、一気にブリンッ!!!と真っ赤に染まり、ゲージが延々振り切れ続けた結果、機械が煙を吹いちゃった――ぐらいの勢いです。
さて「ナイト&デイ」の何が好きかっていうと、そりゃあもう、あの作品が完全にトムさんセルフパロディだからです。いっつも問答無用で正義の側に立っててチョーカッコいいトムさん、と同時に、いっつもあまりにカッコよすぎてちょっと胡散臭いトムさん――そのサマをセルフパロディしてらっしゃる。そして、それが物語の根幹を成している。それってちょっとスゴいくないです??トムさん、そんなことをサラリとやってくれちゃってんですよ。そんなことやってくれるなんて、トムさん、クレバーかつチョーイイ人に違いないですね。んで、ここが大事なとこなんですけど、最終的にトムさんやっぱチョーーカッコいいんですよね。ああああああ……トムさん……オレ、アンタのことが好きだよおお!!!

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さて。「ミッション:インポッシブル」です。
このシリーズって、いわば、パロディの「元ネタ」的ポジションにあたるわけじゃないですか。その最新作が、パロディ的作品公開のわりかしすぐ後にブチ込まれてるのって――結構危険度高い気がするんですよね。だから、実際観るまでは『いかにして物語ってんのかな?大丈夫かな?』と気を揉んでいたわけですが、いざ観てみますと『なるほどその方向性がありますわな!』と大変納得した次第です。


今作の立ち位置は、シリーズおなじみの「指令メッセージ受信シーン」から垣間見ることが出来ます。「尚このテープは自動的に消滅する」つうお馴染みのアレ。今作ではメッセージ流れた後、ちゃんと消滅しなくってトムさんが受信機をガツンとブッ叩くんですよね――
これです、これ。つまり、「ナイト&デイ」ではトムさんをメタ的に扱ったのに対し、「ゴースト・プロトコル」では作品自体をメタ的にとらえておるわけです。


「オレ、パソコンさわっとかないとダメでしょ」
「いやいや、ボクもフツーの分析官やし」
「ワタシはありえないでしょー」
「……(結局オレかよ)」
のやりとりとかそうですね。


「自分、マヂでミッションコンプリート!って叫んだの!??センス疑うわー」
のやりとりとかそうですね。


そして、クレムリン潜入時に使ったヒミツ道具使用シーンもその一つでしょう。あのシーンって――表面上はハイテク&スタイリッシュにみえるけど、裏ではチョー地味な行動とってる――というスパイ活動の本質の部分をあらわにしてる面白名シーンだなーと思うわけです。

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って、この手のメタ視点って、中途半端にやると身内ノリの随分お寒いものになってしまう危険性を孕んでると思うのです。いうなれば「ヌード」みたいなもので、通常は「落ち目になっちゃったから脱いどこうか!もう失うもんないでしょ!」って時におこないがちなわけで、結果、面白さ(エロさ)を得ることは出来るかもしれないけど、同時に「格」を失う可能性もある。それに準じて述べますと、「ゴースト・プロトコル」って、別段凋落してない状況下で脱いでらっしゃるわけです。それって相当リスキーな行為ですよね。もしかしたら、全然イイ写真撮れずに(ホントはそんなことないのに)残念なオッパイ撮れちゃって誰もが寂しい気分になっちゃうかもしれない。なのに「ワタシは皆を楽しませたいのよ!刮目しなさい!!」と気合い一発フルヌードで攻めてきたってカンジです。んで、それが見事に成功してると。見事にエロいと。結果が良い形だからピンとこないんですけど、じつは今作って結構危ない橋渡ってたんじゃないかなーと思ったりします。それを見事渡りきった監督、相当やりよるんじゃないでしょうか。

というわけで、MIシリーズ、もし、次回作作られるなら是非とも同じクルーでつくってほしいなあと切に願います。前述のとおり、今作の内容が良かったからっていうこともあるのですが、ここらで一度1作目みたくクラシカルなテイスト(※)での「ミッション:インポッシブル」をみてみたいなーと思ったからなんですね。ブラッド・バード監督なら絶対できるもん!そっちのほうも得意でしょ!

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(※)なんだかんだ言ってますが、つい最近まで「ミッション:インポッシブル」シリーズって、ちゃんと観たことなかったんです、すみません。でも、この前、テレビでやってた1作目をみて予想以上にクラシカルなたたずまいに惚れてしまったのです。素晴らしいですね。