おじさんたちは残酷にもそれをみながら涙する ―「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら夢を見る」―

日本を代表するヒップホップグループ・ライムスターのMCである宇多丸さんが、自身の冠ラジオ番組にて「この映画は、誇張でもなんでもなく戦争ドキュメンタリーのようだった」と評されてましたが、ホンットそうだなあと思いました。それは、舞台裏のビジュアルや喧騒がグシャグシャしまくってて、まるで塹壕戦の現場みたいだったから――というのもあるのですが、もっと上の視点においてもそうでして、すなわち、AKBのメンバーが置かれてる「状況そのもの」が、完全に「戦争」のメタファーとして成立しちゃってるなあと思ったのです。国家の不条理に振り回され、否応なく戦場に送りこまれる兵士たち――

突然ですが、戦争って愚かしい行為ですよね。そんなこたあ武器商人以外の大概の人には同意頂けると思います。じゃあさ、だからといって、その事象の構成要員である兵士たちも愚かしいものだと思います?彼女らの「生」は「無意味で馬鹿げたもの」だと嘲笑できます?
なにが言いたいのかというと、「所詮AKBなんてハイプでしょ?」とか「こんな悲惨な状況を商売にするなんてホントAKB商法は」とか思ってらっしゃる方がいるんじゃないかなあと思って。あのう、ちょっと聞いて頂けませんかね。あのさ、そもそも今作はじめ、あらゆるドキュメンタリーというものは全ーー部同じ穴のムジナなんじゃないでしょうか。パッと見、残酷だろうが残酷でなかろうが、政治的だろうが非政治的だろうが、その別は関係なく、全てのドキュメンタリーは等しくゲスさや暴力性を内包してると思うんです。それを「やれAKBは」ってカンジで揶揄するのってどうなのかなーと思いまして。そこにはさ、「AKBなら叩いてもOK」的な、なんつーかな「無知ゆえのレイシズムみたいなとってもイヤな思想が潜んでるように思うのですが。

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……すみません。AKBのメンバーが置かれている状況を鑑みるとやや感情的になってしまってまして。いやまあとにかく、この映画からはいろんなことを学ばせて頂きました。一番明確になったことは――宇多丸さんのアイドル評論時の絶対基準「アイドルを評価するときはあくまで楽曲のみで評価する」ってヤツ。これはホント切ない主張ですよね。「声援を送ることが結果的に彼女らを追い詰める……だけど声援を送らないと彼女らは成立しない……」このアンビバレントな状態を乗り越えてアイドルと接するには「楽曲のみに触れる」しか無いんですよねえ。好きすぎるがゆえに距離間を保たざるを得ないなんてじつに切ない話ですね。

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さて、この映画、映像作品としてもじつに優れてるなあと思ってまして。というのは、なんとこの映画、聴衆をバカにしまくってるとしか思えない説明過多演出が蔓延る現代日本において、基本的には「映像」のみで語ってんです。スゴいことですよね、これは。情けない話ですけど
例えば、「アイドルの現場の残酷さ」を端的に表している「西武ドームでのアンコールシーン」ってのがあるんですけど、そのシーン『舞台裏でボロッボロになってるAKBメンバー。そんなことは全く省みず、残酷にもアンコールを送り続けるファンたち』ってのをみせる時、「サイリウムを降り続ける群集の映像」を提示するのみにとどめてるんですよね。これ、現代日本の常識でしたら、アホみたいなナレーションをつけたり、アホみたいなテロップをつけたり、アホみたいに悲壮感あふれる音楽流したりしがちだと思うんですけど、そういうの一切ないんですよ。じつに素晴らしいと思います。

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あ。そうそう。今作を「ビヨンド・ザ・マット」と絡めて語ってらっしゃる方っていらっしゃるのでしょうか?ちらりとどこかで名前が挙がってるのをみたんですが実際の評はみてなくって。いや、ワタクシ「ビヨンド・ザ・マット」未見なんでこれから述べることは全然的外れなことかもしれないのですが、正直、この映画「ワタクシの想像内でのビヨンド・ザ・マット」的展開、つまり、「諸々のゴシップはじめ、AKBにまつわる事象は全てブックに基づいたものである――ということを暴露してくれる物語」だったらどんだけ良かったか……!と思いました。ホント、チーム4のゴタゴタとか見るに堪えないというかなんというか、「なんでそういう処置すんの!!?」と悶絶しまくりで「これが話題作りのためのフィクションだったらイイのに……!というか、フィクションであって……!」と涙流しながら思った次第でした。

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さて。震災の直後、ジャンルを問わず、じつに多くのアーティストの方々が「自分らはこんなことしてていいんだろうか」とか「自分らはなんて無力なんだろうか」とおっしゃってるのを目にしてきました。あれから一年。今ではワタクシは確信しております。アーティストの方々の活動には間違いなく存在意義があると。例えばさ、山本太郎氏が反原発の主張を唱えるのと、和田誠氏の反原発ポスターでは、受け取られ方にスゲー差があると思うのです。全く同じコトバや全く同じ内容だったとしても、アートには人の心を動かすなにかが宿ってる。それは勿論AKBの活動も同様――
実際さ、ここまで苛酷なアイドル映画を観ても尚「アイドルになりたい…!アイドルになって色んな人を勇気づけたい…!」と思った少女って絶対いると思うのです。なんかさ、そういう希望の連鎖みたいなのを想像するだけで泣けるし、もしもですよ、その少女達が何年か後に実際にアイドルになってですよ、たかみなと会うことができたとしたら――そん時のたかみな、期待を裏切らないカンジでスゲー優しいんだろうな……!って想像してたら……嗚呼、また泣けてきちゃいました。

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【余談】
大島さんが巨乳で最高でした。
秋元さんの二の腕が最高でした。
たかみなは全部最高でした。西武ドーム初日終わりあのムード下での練習ん時に着てる「リボンバカ」Tシャツとかもうね。反則ですよね。フライングゲット冒頭でのポーズとかさ。涙腺崩壊。