僕は悪くない ―「苦役列車」―

たまにおるやろ「作家志望!」とか言うてるヤツ。もっとどうしようもないヤツになると「オレ、そのうち自伝書きたいわww」とか言うてるヤツおるやろ。いや、別にええねん。それに関しては全然ええねん。ほんま全然ええねんけどな、そういうヤツの中におるやろが、「お前、自分のオナニー他人に見せつけたいだけやろが」って言いたなるヤツ。ちょっと言うてええ?ダボかっちゅうねん。マジで肥えだめに堕ちてくれへんかな。

あんなあ、ちょっとええかなあ。
文学なめんな。

いや別にええねんで。マジで。別にええねん。ええねんけどな――無自覚的にテメーのオナニー見せつけてくるヤツって「マジなんやねん」ってなんねん。世界は常に自分のほう向いとう思とんですか?自己顕示欲しか無いんですか?ちゅうか、あんたのその万能感はなんなんですか?全部自分の思い通りですか?3歳児ですか?いやマジでな、そういうヤツてほんま大概クズやからな、例えば、周囲の人間の死や病気でさえな、自分のカッコよさをアッピールするために活用したりすんねん。あんなあ、ちょっとええかな、そんなもん全然カッコようないし、むしろ胸糞悪いわ。ほんま反吐でるわ。

でもな。一見おんなじように見えても、「作家志望」とか「自伝書きたい」言うてええ人もおんねん。ここが難しい。ここがほんま難しい。ようするにやな、書かな死んでまう人っておんねん。間違いなくおんねん。そういう人はな、ほんましょうがないと思うねん。そういう人はな、延々血反吐吐きながらでも物語を紡がんとあかんねん。だから、そういう人はな、倫理的な良し悪しなんか関係無いねん。そういう問題とちゃうから。ようは命はっとんやな。その辺のダボみたいにかっこつけたくて書いとんちゃうねん。書かんとな、すみやかに死んでまうんよな。だから、究極的には他人にどうみられようが関係ないねんな。必死やねん、必死。自分が死んでまうから必死やねん。ちゅうてもアレやねんな、究極的には生きるために必死なんちゃうんよな。書くことに必死やねんな。そう思たら、文学無いと死んでまう人って、みだりに「作家志望」とか「自伝書きたい」いわんような気がするわ。そういう問題ちゃうもんな。ゆうたらドラッグみたいなもんやな。ドラッグはかっこつけるためにやるか?ちゅうかドラッグは高尚なもんか?違うやろ。ドラッグはドラッグでしかないけどドラッグが必要な人もおるかもしれんやろ。そう考えたら、ハンパな気持ちで手え出すもんちゃうっちゅうのもわかるんちゃう?

うん。そうやわ。そうやそうや。そういうドラッグないと死んでまう人はな、なんちゅうか、シナリオみたいな小説書いたりせえへんような気がすんねんな。これはちょっと言うときたい。そういうもんて、別に「文学」である必要ないし、そもそも、そんなもん映画で観るほうがよっぽどええっちゅうねんな。ここ、わりと勘違いしてる人多そうやから困るとこやねんけど、「文学」には「文学」のアイデンティティがあんねん。ほんで「文学」でしか、自分の中にある何かを爆発させることが出来ひん人って間違いなくおんねん。ほんでそういう人の文章には、なんていうたらええかようわからんけど、とにかく「文学的なグルーヴ」としかいいようがないなんかが宿ってたりすんねん。


映画も一緒ちゃう?たまにおるやん、「写真家だけど映画撮ってみました☆」みたいな人って。いやそれもな、別にええねん。別にええねんで。おもろい映画やったら全然ええんよ。でもな、逆にな、そういう映画に映画的グルーヴが皆無やったりすると心底むかつくんよな。「マジなめんな」ってなんねんて。それってなんかわかるような気せえへん?あ、念のため言うとくけど、これは「苦役列車」のことちゃうよ。「苦役列車」は映画的グルーヴあるめっちゃエエ映画やから。
あんな、とりあえず、キレーな絵えだけ撮っててもそんなもん全然グルーヴ生むことにはならんっちゅうねん。それとこれは全然関係ない。全然関係ないからな。逆にやな、映画的グルーヴがあるとやな、痛飲して道端でゲロ吐いたり手鼻するだけでも充分「映画として絵になる」ねん。わかる?わからんかな?え?画面の色使いにこだわってみました?ああ、それもええよね、ええ時もある。でもな、あんたの目指してる方向やったら、肉体労働した後、黒いTシャツが塩ふいて白うなっとうことの美しさわからんやろ。きったないパレットの上で飯食ったり煙草ふかしてるだけでめっちゃ心に響いたりするのわからんやろ。しょーーもない色使いにこだわっとるだけやったら、そういうの掴めへんのちゃう?わからんけど。

ああ。なんかモヤモヤするわ。全然上手いこと伝えることができてる気せえへんわ。真面目な話するとやな、僕はいっつもなんでも「グルーヴ」っちゅうもんを掴みたいねん。ほんでそれを言葉で表現したいねん。ちゅうかやな、「グルーヴ」ってなんやねんっちゅうねん。自分で書いとっても思うわ。そんなもん、めっちゃ抽象的かつ主観的なもんやん。狂ってるわ。そんなもんで物事の「良し悪し」を言うのんなんかな、アホのやる所業やっちゅうねん。ほんで、そんなもんもちろん微塵の説得力もないっちゅうねん。いやまあ元々アホやし説得力もないけど、あーほんま自分にムカつくわ。

ほんま、これはめちゃくちゃ悔しいわ。僕はほんまに言葉で表現したいねん。前田あっちゃんの良さを伝えたいねん。アンチもようさんおるやろけどな、ちゅうか僕も昔は全然好きちゃうかったけど、そんなあっちゃんが、映画ん中で笑顔みせるだけでなんかしらんけどむっちゃ泣けたりすんねん。その理由をな、上手いこと言葉で表現できひんもどかしさをなんとかしたいわ。それぐらい、あっちゃんの笑顔は複雑ななんかを喚起させる素晴らしい笑顔やったんや――としかよう言われへんわ。ほんま僕アホやわ。ムカつくわ。
でも、まあとにかく「苦役列車」はほんまにええ映画やったんやって。これだけは断言できるわ。全部エエ。映画的な隙さえ好きになるぐらいエエ。映画観終わった後、街の風景が変わって見えたぐらいやから相当エエ。街の「テナント募集」の看板みただけで、なんか色々滾ってくるぐらいエエ。ほんまな、このたび色々文句言うてるけどな、僕は全然悪ないねん。エエ映画すぎる「苦役列車」が悪いねんて。