「アウトロー」――トムさんとトムさん以外の事について
具体的な内容への踏み込みありますので、ネタバレ的なものがお嫌いな方はご注意ください。
元アメリカ陸軍エリート捜査官・現在エリートホーボーのジャック・リーチャーさんが、同じく元軍人のスナイパーが起こした銃乱射事件の真相に挑みます。
とりあえず、この作品、主人公であるジャック・リーチャーさん演じるトム・クルーズさんが最高かつ最強です。そう。最高かつ最強なんです。つってもアレなんです、漢気があるとか、腕っぷしが強いとかそういう意味ではなく、いや、そういう意味でも最高であり最強なのですが、ここで言いたいのは――
以前、ワタクシは「MI-GP」の感想で以下のようなことを書きました。トムさんは「ナイト&デイ」において、自身のもつ「カンペキすぎるがゆえにどこか胡散臭いというイメージ」を最大限に利用した、メタ・トムとでもいうべきキャラを演じてらっしゃって最高だった――んで、間髪いれずの「MI-GP」においては、MIシリーズそのものまでもがメタ的に描かれており最高だった――このような作品に立て続けで出演するなんて、トムさんマジ先鋭的で絶対イイ人で作品も面白いから言うことなくってマジ最高だ――と。つまり、トムさん、前回前々回の出演作はメタメタで最高だったわけですが、じゃあ、今回はいかなる方向で攻めてくるのだろう?と思っていましたら、トムさん、なんとなんとグリンッと一周半して「ふつーにカッコいい」状態でやってきたわけです。これが最高かつ最強だというわけです。ヤバすぎます。
だってさ、これってもう「フツーに」でも「逆に」でも「逆の逆に」でも、どんな見方をしても対応可能、全方位的にカッコよろしいということになるわけです。つまり、先に挙げた「最高であり最強」というのは、トムさんという俳優自身が、批評される場において最高であり最強だということです。
さて。このカンジって誰かに似てるなあと思ったのですが、これってチャールズ・ブロンソン的なのではないかと思ったのです*1。ブロンソンもさ、超絶にカッコよろしいけど、正直「プププ」ってなるとこあるじゃないですか。ヒゲ具合とか。岩みたいな顔面の様相とか。でもさ、最終的には、その「プププ」すら凌駕するカッコよさを届けてくれる。とりあえず、この作品のトムさんは間違いなくその域に突入しています。少し具体的に述べますと――この作品では、トムさんのバックショットが沢山みられるのですが、その度に思うのです。「気のせいかもしれないけど、トムさんの襟足って異常に揃ってるよな……」と。でさ、その襟足の揃い具合が果たしてカッコよろしいかと言われると、ま、正直なところ疑問なわけです。でもさ、最終的には、圧倒的なトムさんのカッコよさに感化され、「やっぱ、男たるもの襟足揃えてナンボってとこあるよな。ちょーかっこいいよな」と思えてしまったりする。こうなってしまうともう――
無敵です。
この状態になってしまうとマジ無敵なんです。この状態になってしまえば、終盤の襲撃シーンにおいて、ナイフ一本で突入せざるを得なくなることのちょっとした不自然さも全然疑問じゃなくなる。最後の最後の肉弾戦も全然疑問じゃなくなる。もう一度言いましょう、「フツーに」「逆に」「逆の逆に」カッコよろしい――これは――
無敵なんです。
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と、この作品、トムさん要素だけでも十分最高なのに、それに留まらず、全編に渡って秀逸すぎる演出がてんこ盛りで痺れまくりです。過度な説明を避けた、じつに抑制の効いた見事すぎる演出の数々。
いっちゃん最初に唸ったのは――トムさんが、事件の真相につながると思われる少女*2に接触しようと、彼女が勤めているスーパーオートバックス(仮)を訪ねにいくくだり。ここがもう最高すぎます。
トムさんが店内に入ったところ、店内には誰もいない。そこでトムさん、レジに備え付けてある呼び鈴を「チンチンチーーン〜〜」と鳴らす。そしたら、店の奥から男性店員がめんどくさそうに登場し、ベルの「ーーンン〜〜……」つってる残響音を手でピタッと止めくさる――
もうさ!この僅かな動作だけで!この店員の野郎!オープンのときから働いてるとかで!つまり、「他のバイト連中よりちょっとだけ勤めてる時間が長い」レベルのことで!チェーン店内宇宙でのみ!えらそーにしてるしょーもない野郎なんだろ!ってカンジがビンビン伝わってくるわけです*3。それにかぶせて「あんなダサいトラック乗るのはアイツしかいないだろ(笑)」なんて言われるわけですから、この演出具合に大興奮、鼻血が出ました。
他にも、本作のヒロイン――逮捕された元スナイパーの弁護士であるヘレン・ロディンさん――のオッパイ描写が素晴らしくって悶絶しました。彼女、はじめてじっくりトムさんと接触するシーンではとっくりセーター着てらっしゃるんですね*4。そのくだりでは、彼女とトムさん、単なる仕事上の関係から距離を詰めてくのか?と思わせるんですけど、その辺の本来の流れとは無関係のところで、彼女がふとした瞬間、すんごい自然なカンジでオッパイを突き出したりなんかして、「あれ?ヘレンさんって、ずいぶん立派なオッパイされてるなあ」と思わせてくれるんですね。結局、彼女とトムさんは一線を越えることはないのですが*5、次に彼女が自身の事務所でトムさんと対面するシーンでは、ヘレンさん、なんと胸の谷間がばっくりみえるお洋服を着てらっしゃるんですよね。素晴らしすぎて失禁しました、失禁。
あと。今回の事件の黒幕であるゼックさんの最後のシーンも、あまりに最高すぎて悶絶でした。そこまでの流れでは、ゼックさんはどんな拷問にも屈しない、人間を超越したレベルの極悪非道生物みたいなていで描かれてんのに、追い詰められちゃったら、急転直下、突然「ゴメンねテヘペロ☆」みたいなカンジのちょー可愛い表情みせるのです。とりあえず、こんなカンジで一事が万事、諸々の情報を説明過多に陥らず絵で魅せてくるんです。言うことないです。マジ最高すぎます。
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と。なんかこういう風にしか書けない自分の業の深さに嫌気がさしてもいるのですが、「アウトロー」マジ最高なのです。最後にちょっとだけ真面目なこと書いておきますと、宣伝で推してるカーチェイスシーンとかホントたまらないのです。昔の車のさ、アクセル踏んだ時にギアが噛み合って駆動してんだなあってのが解るカンジとかさ、ブオンッと抜ける排気音とかさ、いちいちビンビンきてしまいます*6。ホントあのエグゾーストノイズは映画館の音響で体験できて良かったです。で、カーチェイスの締め方も素晴らしくって、グッシャングシャンの車をサラリと乗り捨て、サラリとバスの乗客に紛れてって、隣りのおじさんからサラリと帽子借りて、一緒にバスに乗った二人はお互い進行方向を向いたまま視線をかわすことなくニヤリ――っていう、動から静への流れがもおおおおお脱糞レベルのかっこよさ!!!……って、結局、最後の最後まで身体からなんか吹き出しちゃってすみません。でもホント最高の作品だったのです。クラシック認定。