「サプライズ」次はお前だー!

わりとネタバレしていますので、これから観賞されるご予定のある方は後ほどのほうが良いと思います。が、致命的なことは無いように気をつけてはおります。

とある家族が人里離れた別荘で動物のマスクをつけた怪人に襲われます。


とりあえず、諸々の設定がとてもわかりやすくて素晴らしいです。
両親の結婚35周年パーティに参加するため、長いあいだ離ればなれで暮らしてきたっぽい息子娘たちが人里離れた別荘に集まってくるんですけど、そこに集いし四人兄妹とそのパートナー達、揃いも揃って(しかし、それぞれ違った方向で)絶妙な塩梅のカンジの悪さ醸し出してんですよね。最高です。ジョックスの長男。ニートの次男。パンクス?ゴス?の三男。オシャレサブカルの妹。こうやって書いてみると、スクールカーストの置き換えみたいだな。まあ、とりあえず、誰が犠牲になっても、そこまで後味の悪さを感じない絶妙な設定で、でも、だからといって書き割り感のあるキャラは一人もおらず、みんなどこか愛嬌あってとてもイイカンジです。思わぬところで出るしゃべり方の品の良さとか素晴らしかった。とくに長男は距離をおいて観察する分には激キャワ。基本ウザいから近くにはいてほしくないけど。なんか体臭キツそうだし。

もちろん、お父さんお母さんもイイカンジでヤバかったです。なにせ、お父さんは軍事産業マーケティング部門で働いてらっしゃったとのことで、もうそのワンフレーズだけで、お父さんのクソ人間っぷりと大金持ちっぷりがよくわかります。つかさ、お父さん、なんでこんなとこに別荘買っちゃったんだよ!少し前にお隣さんの家も動物マスクの怪人に襲われてるのに!んでそれが全く発覚してないぐらい辺鄙なところだなんて、環境もタイミングも最悪すぎ!つって、まあでも「事故」ってそういうもんですからね。「不慮の事故」っていうけど事故って基本的に不慮だから。とフォローしておきます。


さて、お話しが進んでまいりますと――まあ、これはしょうがないですね、そういう映画なんですから――兄弟の元に殺人マシンの魔の手が迫ってきます。そして、欲望にまみれた醜き俗人がおもっくそ殴打されちゃったりガリガリされちゃったりします。本来そういうふうに使っちゃあダメなもので。でも、ダメだからこそとてもイケてます。エモいです。最高です。いやホント、この作品、殺人マシンが殴りながらテンションあがってきてんのがビンビン伝わってくるんですよね。あれはなんとも人間臭くて良い。共感しちゃあダメですがおもわず「頑張れ!!」って思ってしまいますね。
あとさ、例えば、過去のスリラーに登場する殺人マシンおじさんの中にも、オシャレなブービートラップしかけてはった人っていると思うんですね。ドア開けたら喉元に当たる位置に鋭利な鉄線張ってみたりとか。それってさ、我々観客は、獲物がトラップにはまる瞬間しか知らんくて、だから、必然そのシーンはテンションあがっちゃうだけになりがちなんですが「じつはそのトラップってわりと緻密にし掛けてる」という事実があるはずなんですよね。で、です。なんとこの作品、その辺りに関しての言及をしておりまして、その「じ・つ・は」の部分、つまり、殺人マシンが地道に罠を仕掛けるとこを入念に描いてみたりしてんですよね。これがマジでオシャレ。金の亡者がトラップにはまる瞬間とかフリオチ効きまくりで、つか、ご丁寧なことに罠にはまる瞬間をスローモーションでみせたりするもんだから、ちょー最高だったりします。観客もおもわず笑顔で「yeees!!!!」と言っちゃう勢いではないでしょうか。
他にも、殺人マシンによる恐怖演出具合とかも最高に良かったです。スリラーものみてたら「この殺人鬼、細かい恐怖演出してくるよなあ」ってのあったりするじゃないですか。「獲物の恐怖心煽ってんなあ」つって。この作品では、フラッシュが効果的に使われていましたね。フラッシュがバシッ!バシッ!つって。あれ、実際目くらましになるだろし、なんか高ぶるし「わかってんなー!この殺人野郎!」ってなること間違いないですね。他にもさ、闘いの中で殺人マシンも傷ついたりするわけですけど、その都度、イカしたシンセサウンドが鳴り響いたりして、いちいちイイカンジにしてくれるので、観終わった後はとっても爽やかな気持ちになるという稀有なパターンのスリラーでしたね――


つって、こういう風に書いてみるとすげー普通のシチュエーションスリラーみたいですね。いや、そうなんですよ、おそらくパーツパーツは普通なんですけど、これがとっても面白く化けるんですよね。どういうことかっつーと、それは見てのお楽しみですね。あっと驚くサプライズがあるかも。というわけでオススメ。