「天使の分け前」における盗人問題

この映画、めちゃくちゃ好きな類いの映画でした。なにがどう好きだったのかといいますと――登場人物達のキャラ立ち?ええ、良かったですね。歯がないヤツは大体トモダチ。でもそれが肝ではありません。じゃあ風景?スコットランドの街並みや大自然、良かったですね。でもそれも肝じゃない。音楽?音楽もイイ。編集?それもイイ。時間?もちろんタイトでイイ。あれもこれもそれも?あれもこれもそれも素晴らしい。でもあれもこれもそれも肝じゃなくって、ワタクシ的にはこの映画、テロ映画つーところが一番キたのです。テロ映画つーのが肝。テロ映画はホントに最高です。
しかしです。Googleでこの映画について検索してみてますと、最初のほうに出てくるYahoo!映画の評価はそんなに高くない。で、どこがどうダメだと思われてんだろう?と気になり、低評価を下しているレビューを読んでみたのですが、それがまああああ悉く納得できないんですね。だから、ワタクシはワタクシの感想を書きます。これは、一個人によるYahoo!映画レビューという何かのなにか」に対するテロルなのです

スコットランドのクソみたいな地区でクソどうしようもない生活を送っているロビー君。彼は子供が生まれることもあり、一刻も早くこのクソ生活から脱却したいと思っています。その辺りを考慮してくれたのでしょう、彼が直前に起こした傷害事件に対して裁判所は実刑を求刑せず、社会奉仕活動に従事することを命じます。ロビー君はその活動の中でちょうイイ指導員やちょうバカな悪友たちと出会い、そして、なによりウィスキーを通じて自分の才能と出会います。そんなこんなで真人間になろうと頑張るロビー君ですが、周囲の環境の劣悪さはハンパなく、なかなかその泥沼から脱却出来ないのでした。


まずさ、ロビー君の境遇のどうしようもなさがスゴいんですよね。住むところが無いんですよ。親父同士のケンカが息子の代にまで及んでいるんですよ。街そのものが発するDQNヴァイブスが尋常じゃないのです。俄かに信じ難いレベルないのです。でも、これ実際にそういうもんなんでしょうね。だってさ、いうじゃん「イギリスの労働者階級の人がそこから脱するには、フットボール選手になるか、ロックスターになるか、ギャングになるかしかない」つって。じゃあさ、才能もなんもない人間がただただ単純に「まともになりたい……!」と思ったらどうすんのさ。諦めてクソみたいな階級社会に順応せざるを得ないということじゃん。つってさ、単純に順応出来る人はいいですよ。でも、ロビー君みたく、なまじ自我に目覚めてしまった人にとってはそれはもう地獄でしかないですよね。理不尽極まりない。

そんな泥沼状態の生活を送っていたロビー君でしたが、或る日、彼は rarest of rare とでもいうべきウィスキーがオークションにかけられることを知り、それを盗みだして一攫千金を企むのでした。


ここですね。ここ。問題は。Yahoo!映画の低評価レビューは、大体この行為に対して、「なんだかんだいってロビーの奴、犯罪犯そうとするし、全っ然反省してないやん。マジ最悪やな」とおっしゃられている。あのですね、だから、ロビー君が生きている社会はマジでどうしようもないっつってるじゃん。そもそものベースがまともな社会じゃないんだよ。まともな方法論でまともになれる可能性がない社会なんだよ。って、だから、そのこと明確に描いてるじゃん。何度同じこと書かせるんだよ。なのに、それを大してなんも考えず、我々の道徳律に当てはめて受け取ろうとする感覚は全然理解できません。大体、今の日本人は自分の常識を世界の常識だと思っている幼児みたいな人が多すぎやしませんか
というかです。そもそもです。犯罪ってさ、加害者と被害者がいてこそ成り立つわけですよね。じゃあ、ロビー君の行為が犯罪というのなら、それによって誰が被害を被るのでしょうか?あれを盗むことによって誰が損するのでしょうか?つか、ロビー君一向が盗もうとしたウィスキーの出処ってどこなのでしょうか?つまり、これさ、例えば「ギャングの持ち物だからイイんだよ」ってレベルの話ですらないからね。ギャングの持ち物だったらギャングは困るけど、このウィスキーはそういうもんですら無いからね。「このウィスキーを作った蒸留所は60年代に閉鎖されている」「樽がみつかったのはすげー離れたとこにある全然関係ない倉庫」「そこから鑑みるに、どうやら蒸留所同士で交換が行われたようだ。が、それは推測にすぎない」んですよ。そんな、誰のものかっつーのがイマイチ判然としないウィスキーをオークションにかける行為は正当な行為なんでしょうか?

つまり、ロビー君一向の盗みは、味もわかんねーのに出自だけを有り難がって、バカみたいな金額でウィスキーを取引してる奴らに対するテロ行為なのです。そう、これはスノビズムファンダメンタリズムに対するテロルなんだよ。つかさ、どっちかっつーと、我々の側こそがスノビズムファンダメンタリズムによって色んなもんを盗まれてんじゃねーのか?このウィスキーがそうであるように!!!とさえ思えてきます。それをチクチクチクチク、今の日本人はちょっと程度が悪そうな人がいるかと思ったら、途端に正義感振りかざして優位に立ったげになってオナニーしてる人が多すぎやしませんか。と同時に、奴隷根性が身にしみつきすぎててさ、ほんと自分で自分に腰紐をつけて喜ぶ人が多すぎやしませんか。つかさ、最悪、自分で自分に腰紐つけるのはイイよ。でも、それを周りにまで強要するのは止めて頂けないでしょうか。いやマジでさ、盗人を擁護してる、というか加担してるのはどっちなんだよ

ちょっと話が逸れてしまいましたが、彼らが最後に手に入れたものってのも大変よくってさ、でも、まあそれは見てのお楽しみということで具体的に書くのはやめておくとします。が、ようするにそういうことです。そこには何があったのか?成功してビッグマネーを手に入れたのか?失敗して捕まっちゃったのか?何かを知ったのか?それとも知れなかったのか?はたまた??